🏚️ 旧市街地改造法とは？

〜戦後日本の都市再建を支えた都市再開発の先駆的法制度を徹底解説〜

✅ 目次

1. はじめに：旧市街地改造法とは

2. 戦後日本における都市の課題と法制定の背景

3. 旧市街地改造法の目的と基本的な考え方

4. 改造事業の対象区域と手続き

5. 旧法と現在の都市再開発法との違い

6. 対象となった主要都市の事例（東京・大阪・名古屋ほか）

7. 改造法における公共施設・建築制限・補償制度の特徴

8. 民間事業者・地権者・住民の関係性

9. 成功例と失敗例に見る運用のリアル

10. 地方都市における旧法活用の可能性と課題

11. 法改正と廃止の経緯

12. 現行制度（都市再開発法など）への継承と影響

13. 現代の都市計画における再評価の動き

14. 残された課題と地域住民の権利保護のあり方

15. まとめ：都市改造の思想と“まちづくり”の原点

📘 第1章：旧市街地改造法とは

旧市街地改造法（昭和27年法律第105号）は、戦後の焼け野原となった都市を復興するために制定された都市再開発法制の前身となる法律です。
この法律は、都市の再整備を“国家主導”で行うことを可能にし、老朽建築や無秩序な市街地を一気に改造する枠組みを提供しました。

目的は「不健全な市街地の改造・復興」「住環境の改善」「都市機能の再生」

🔥 第2章：戦後日本における都市の課題と法制定の背景

戦後の主要都市では、以下の課題が一気に噴出しました：

• 空襲被害により市街地が壊滅的状態

• 戦前の雑然とした都市構造のまま復興が進行

• 道路幅員が狭く、防災・消防上も危険

• 衛生環境が悪く、スラム化・密集住宅が問題化

📌 このような状況下で「まち全体を作り直す」という国家的決断が必要とされ、旧市街地改造法が誕生しました。

🎯 第3章：法律の目的と基本構造

旧市街地改造法の基本的な目的は以下のとおり：

• 都市の老朽化区域の抜本的な改造

• 公共施設（道路・公園・上下水）を整備し直す

• 土地区画整理のように“建物の整理・再配置”を進める

✅ 区画整理と違い、建物の除却・共同化も含む「再建型」の都市整備です。

📍 第4章：改造事業の対象区域と制度の流れ

対象となるのは、以下のような区域：

• 木造密集市街地

• 道路幅員4m未満の市街地

• 戦災復興土地区画整理区域外の未整備地域

📌 主な流れ：

🏗️ 第5章：都市再開発法との違い

✅ 旧法は“国家主導・一気に更地化して建て直す”のが特徴。
✅ 現在の都市再開発は“合意形成・権利調整・段階整備”が基本。

🏙️ 第6章：対象となった主要都市の事例（東京・大阪・名古屋ほか）

✔️ 東京都：墨田区・台東区など

• 木造密集地帯が多く、延焼の危険が高かった

• 改造法により道路拡幅＋共同住宅化が進む

• 防災・衛生両面の改善に貢献

✔️ 大阪市：西成区・浪速区

• 戦災で壊滅した区域の再生

• 商業機能・住宅機能の分離と区画整理

• 高層住宅＋市場施設が整備された事例あり

✔️ 名古屋市：中区など

• 路地裏・低地・堤防沿いの市街地再整備

• 排水インフラ・電力配線の地中化

✅ これらの事例は、「一気に都市を作り直す」法制度の力を実感できる実例です。

🛣️ 第7章：公共施設整備・建築制限・補償制度の特徴

✔️ 公共施設整備：

• 都市の基幹道路・上下水道・公園・防火帯を優先整備

• 街区ごとに新道路配置 → 整形された敷地に再分譲

✔️ 建築制限：

• 仮設建築の規制強化

• 建築許可制により、用途・高さ・構造を誘導

✔️ 補償制度：

• 初期は建物除却費等が不十分

• 地主・借地人・借家人の補償格差も問題化
  → これが都市再開発法成立の背景にもなった

🧍‍♂️ 第8章：地権者・住民・行政の関係性

• 行政主導であったため、住民意向が反映されにくい構造

• 補償に不満を持つ地権者の立ち退き拒否も発生

• 住民運動による事業中止の事例も一部に存在

📝 一方で、「長年の危険な生活環境から解放された」という感謝の声も多かった。

📈 第9章：成功例と失敗例に見る運用のリアル

✅ 成功事例の要素

• 広域的な道路網と一体での整備

• 公営住宅・保育所・公園など複合的整備

• 官民共同のまちづくり団体が組成された

❌ 失敗事例の要素

• 住民不在の画一的な再整備

• 商業機能・地域文化の消失

• 補償交渉の不備による訴訟・対立

🏘️ 第10章：地方都市における活用の可能性と課題

• 地方都市でも木造密集地や路地集落の改造に利用

• 高齢化が進んだ地域においても再整備が行われた

• しかし、地域特性無視の画一的開発により“誰も戻らない街”になるリスクも

📌 地方においては“地域性”と“住民参加”が成功のカギ。

⚖️ 第11章：法改正と廃止の経緯

• 制定：昭和27年（1952年）

• 法改正：数回の軽微改正を経て

• 廃止：昭和44年（1969年）、都市再開発法にバトンタッチ

📌 旧法の「迅速性」は評価される一方で、補償・権利調整の未整備が廃止理由となった。

🔁 第12章：都市再開発法への継承と影響

✅ 「旧法で得た反省」が、現代の都市再開発制度の礎となった。

🔍 第13章：現代における再評価の動き

• 災害被災地での“強制再編”手法の再検討

• 不燃化特区・密集市街地整備などとの共通性

• 高齢化した“昭和型団地”の再構築にも通じる

📌 「スピード」と「一括整備」の重要性が見直されつつある。

🧩 第14章：地域住民の権利保護のあり方

• 強制的な立退きではなく「説明→同意→協力」の流れが必須

• 借地人・借家人の居住権確保

• 等価交換・代替地提供・住替え支援策などを組み合わせることが現代の標準

🏁 第15章：まとめ

旧市街地改造法は、
日本の戦後都市再生を支えた“都市整備の原点”とも言える法律です。

✅ 災害・老朽・密集など、現代にも通じる課題に対し
✅ 「一体的に都市を改造する」という発想は、今なお有効
✅ ただし、住民参加・権利調整の仕組みとセットでなければ時代に合わない

再開発の原点に立ち返ることが、“令和のまちづくり”を支える力になります。