📘生産緑地法とは?
制度の概要と都市農地の行方を徹底解説【2022年問題にも触れる】
✅はじめに|“農地が都市の中で生き残る”ための法律
都市の中にぽっかりと残された田畑。
それは、ただの未利用地ではなく――
**都市機能を支える重要な“緑のインフラ”**です。
しかし、地価の高い市街化区域内で農地を維持するのは簡単ではありません。
税金・開発圧力・相続問題……。そんな中で「都市農地を守るための法律」として生まれたのが、生産緑地法です。
本記事では、生産緑地法の仕組み・指定条件・税制メリット・そして話題になった2022年問題までをやさしく、でも実務に強く解説します。
🏛️1. 生産緑地法とは?制度の概要と目的
▶正式名称
生産緑地法(平成3年法律第68号)
施行:1992年(平成4年)
▶法律の目的(第1条より要約)
-
市街化区域内にある農地を計画的に保全し、
-
都市環境の向上と防災機能の強化に資すること。
つまり「市街化された都市でも農地を守る」という、
かなり珍しい“都市農業特化型”の法律です。
🧩2. 生産緑地に指定される条件と手続き
指定される農地は、以下のような条件を満たす必要があります:
指定条件 | 内容 |
---|---|
市街化区域内 | 都市計画区域内でも“市街化区域”に限る |
農地面積500㎡以上 | 都市によっては300㎡に緩和される例もあり |
継続的な営農意志 | 自ら耕作を継続する農業従事者であること |
施設がないこと | 家屋や倉庫などが建っていない農地 |
▶指定の流れ(農家から申請→市区町村が指定)
🧾3. 生産緑地の税制優遇|固定資産税と相続税
生産緑地に指定されると、大幅な税負担の軽減があります。
▶固定資産税の優遇
通常の宅地評価→農地評価に引き下げされます。
都心部では、これだけで年間100万円単位の軽減になることも。
▶相続税の優遇(小規模宅地等の特例)
つまり、節税対策として極めて有効な手段でもあるわけです。
⏳4. なぜ1992年に制度化されたのか?背景を振り返る
戦後、日本の都市農地は「開発待ちの空地」と見なされていました。
1970年の都市計画法では、市街化区域にある農地は基本的に「宅地化を促進」される土地。つまり、
「農地として残すことがむしろおかしい」
という政策方針だったのです。
▶1980年代の転機
-
地価の高騰 → 無理な宅地化が社会問題に
-
地方都市のヒートアイランド現象
-
防災性のある土地が減少
→ 都市農地の再評価が始まり、1991年に生産緑地法が成立しました。
📅5. 「生産緑地2022年問題」とは?
これは、生産緑地が指定から30年経過する2022年を境に、多くの農地が“自由に売却・転用”可能になるという問題です。
▶1992年に指定された農地はどうなる?
→ 2022年で指定期間が満了
→ 所有者は「市に買い取りを申し出る権利」が発生
→ 市が買い取らない場合は宅地化や売却も自由に可能
つまり、都市農地が一気に宅地や駐車場に転換されるリスクが全国で懸念されていたのです。
🛡️6. それにどう対応したのか?「特定生産緑地制度」
2022年問題に対し、政府は**特定生産緑地制度(2017年法改正)**を導入。
▶特定生産緑地の概要
これにより、都市農地の保全と所有者の選択肢が両立されるようになりました。
🏡7. 生産緑地と市街化区域の“矛盾”とは?
生産緑地は市街化区域の中にありながら、
“農地として開発を制限する”という点で矛盾を抱えています。
視点 | 内容 |
---|---|
都市計画 | 市街化=宅地化すべき区域 |
生産緑地 | 宅地化を制限し、農地維持 |
不動産市場 | 「将来の開発地」として期待されがち |
このバランス調整こそが、生産緑地法の難しさであり、面白さでもあります。
✅まとめ|生産緑地は“都市の命綱”になる可能性もある
生産緑地法は、ただ農地を守る法律ではありません。
それは――
「都市の中に“緑”と“食”と“命”を残すための制度」
です。
今後は、農業継続支援や若手就農誘導、都市型農業ビジネスとの連携など、
さらに柔軟で実効性ある制度運用が求められるでしょう。
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